2014年10月31日金曜日

松田素子さんの講演会報告。

 4月に小金井市立図書館の新しい分館「貫井北町分館」が開館したことを記念し、小金井市文庫サークル連絡会と貫井北町分館の共催による講演会が10月19日(土)、北町分館の公民館ホールで開催されました。
「まど・みちおの世界と私〜104歳まで詩を紡ぎだした天性の詩人〜」と題し、まどみちおさんの晩年の編集者だった松田素子さんにお話していただきました。


松田素子さんは、編集者であり作家で翻訳家でもあります。前半はまどさんの思い出、松田さんが実際に見てこられたまどさんのことをお話くださいました。100歳を越えても日々、詩をつむいでいたまどみちおさん。それは詩を書くというよりも、日々の暮らしそのものが詩だった。その世界を実際に間近で感じた松田さんは、それを後世に伝えていかなければならないと強く感じられたそうだ。
東日本大震災が起きて、なにか支援したいと考えた時に、まどさんの詩をまとめた冊子を被災地の子どもたちに松田さんが手渡しした。それを1人の女の子がとても大切にし、心の支えにしてくれているという話を聞き、まどさんの詩の力をあらためて感じた松田さん。
子どもたちの心を励まし続けるまどさんの詩、それを愛する子どもたちによって、まどさんは永遠に生き続けるのだと感じだと話され、その通りだと聞いている私たちも感じました。



まどさんが母校の小学校に送った手紙を松田さんが見つけ、もっと広くたくさんの子どもたちに読んでほしいと出版した本。まどさんがご存命の間に出版できなかったことが、とても心残りとおしゃっていた。でもきっとまどさんには届いていますね。

まどさんの詩に、柚木沙弥郎さんの絵『せんねんまんねん』これも松田さんの企画です。



講演の後半は、松田さんの編集のお仕事についてお話下さいました。
例えば『せんねんまんねん』の染色家の柚木沙弥郎さんとの出会い、それまで絵本は描いていなかった柚木さん、ずっと年上の人にでも松田さんは躊躇せず、要望を出します。そして描き手も悩みながらその要望に応えて、絵本を作り上げていく。

その工程をいろいろな事例をあげてお話してくださいました。

子どもたちに大人気のなかやみわさんの『そらまめくんのベット』は、最初からかわいいキャラクターはできていたものの、背景が平凡で森の描き方が甘かった。「そらまめくんがどんな季節に生まれて、どんなふうに暮らしているのかもっと考えてみて」とアドバイスすると、なかやさんはそらまめくんだけでなく、グリンピース兄弟などの脇役たちの性格のひとつひとつまで考えて、そらまめくんの世界を作り上げて、それを書いたものを持ってきた。そこまでしっかりと考えてから描いたから、深みのあるものになったし、次回作はすぐに書くことができたと思う。



長谷川義史さんと松田さんの出会いは、小さな映画のパンフレットの挿絵で、なんか面白いものを描いてくれるのでないかと感じ、大阪まで会いにいった。絵だけでなく物語も書いて下さいとお願いしたら、躊躇した長谷川さんだったが、きっちり一か月後にこれの素案を描いてもってきてくれた。最初は顔だけがばーんと出ている絵だったりして、おじいちゃんのおじいちゃんの・・・という面白さが出ていないとダメだしして、なんども描き直してもらった。大変だったと思うけど、そこで描きなおしてくれたからこそ、長谷川さんはいい絵本作家になったんだと思う。




編集者は影の仕事だけれど、よい編集者がいなければよい絵本は生まれないのだと感じるお話でした。なにげなく読んでいる本も、こんなに何ども描き直して、作品の背景も考えて作られていることがよくわかり、子どもたちにもっともっと手にとってももらいたい、読んでほしいという気持が強まりました。

こごうちぶんこももっといい絵本をたくさん置いて、たくさんの子どもたちに読んでほしい!そう感じた講演会でした。

松田素子さん、ありがとうございました!

文庫連のみなさん、お疲れ様でした!


*講演会の時に販売した本の中から、こごうちぶんこにはムーミンの絵本を2冊買いました。松田さんのサイン入りです。ぶんこで一緒に読もうね!



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