2015年5月10日日曜日

書評『パパとおはなし』



4月のぶんこで『パパとおはなし』というまど・みちおさんの絵本の読みきかせをしました。子どもに向けての読みきかせですが、一緒にきているお母さん達には書評を書いた紙を渡しました(下記)。
この本を読んで、またいろいろ感じてもらえたらいいなという気持をこめて、スタッフの上田郁子さんが書いたものです。当日の読みきかせも上田さんが担当しました。

















*パパとおはなし*(まど・みちお作かわかみたかこ絵、国土社)

たろう君とパパとのおしゃべり、というスタイルで進行するこのお話。
パパはひょうひょうとテキトーな感じで会話しているようでいて、実は、とても話上手で、話させ上手です。
そうそう、そうだね、とたろう君の言葉をそのまま受け取る、という応対は、こどもとのコミュニケーションには大切とよく言われていることです。でも、パパが秀逸なのはそこではありません。ちょっとにくたらしいことを言って「へんなの!」と言わせたり、「(にわとりを)だっこさせてくれたんでしょ」「いいや、させなかった」
などと、たろう君の期待をわざと裏切ります。
たろう君は「パパはだっこさせてくれた、ぼくはだっこした」と主張します。パパはそこを捉えて、話の主体を自分からたろう君に切替えてしまいます。
「へえ、そうだったかな、じゃあ、たろうはそれでどうしたの?」
「ぼくはね…」そこから先の話の展開はたろう君まかせ。主導権を握ったたろう君は、想像の世界をどんどん広げて行きます。
パパは相槌をうったり、感想やアイデアをはさんだりしながら、たろう君ののびのびとした言葉を促していきます。その促し方がなんとも楽しいのです!
このお話のもう一つのすばらしいところは、終わり方です。ママの声に夢の世界はパタッと終わり、現実の楽しみへと目が向けられます。
空想を楽しみ、どこかで切り上げ、現実に戻る。現実もまた楽しい。そんな幸せな体験をくりかえして、こどもたちは、空想と現実の楽しい行き来の仕方を身につけていくようです。  
                 文:上田郁子(心理カウンセラー)




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