2015年7月29日水曜日

書評『ちか100かいだてのいえ』

ぶんこで読み聞かせの時に、お母さんたちにその日に読む本について書いた紙を配ることがあります。スタッフの上田さんが書いているものです。
こちらでもご紹介します。

*ちか100かいだてのいえ・いわいとしお作*


 物語はふつう、一定の広さの舞台で一定の時間の流れにのって進んでいきます。それが世界を知っていくふつうのやり方だからです。
 でもこの「100かいだてのいえ」シリーズは、ちょっと違います。
 舞台の軸が横の広がりではなく、縦なのです。
 横の移動はほとんどなく、縦の移動だけで物語は進みます。下へ下へと進むだけなのに、世界はひと続きながらもどんどん変化し、新鮮なドキドキワクワクを展開していきます。
 それは、子どもたちに新しい“世界の知り方”を教えてくれます。
 世界は横だけでなく縦にも広がっている。これを体感した時の感覚は、まさに次元が一つ上がるダイナミックな体験、3D映像を見た時みたいに? それ以上の? とにかく思わず「わあ!」って言っちゃうような、楽しい体験ではないでしょうか。
 このような3次元的な世界の捉え方を活かした物語づくりをしているのが、ご存知スタジオジブリの宮崎駿監督です。横軸となる舞台設定もすばらしいのですが、縦の移動のダイナミックさ、物語に与えている影響の重要さに注目して観てみてください。あのワクワク感、世界の真相に迫る迫力の秘密が、ちょっと垣間見えるような気が、私はします(*^。^*)。
「ちか100かいだてのいえ」のラストにも、「わあ!」と声を上げたくなっちゃうような、縦のスペシャルダイナミックなワクワク展開が用意されています。子どもたちと一緒に「わあ!」って言いたいですね。
 一方で、横軸だけ、時間さえ止めて、新しい“世界の知り方”を教えてくれる物語もあります。長谷川義史さんの「ぼくがラーメンたべてるとき」は、ぼくがラーメンを食べているその時に時間を固定して、世界中のいろんな場所の一瞬をとらえていくことで、大きな大きなスケールの、新しい視点を私たちに示してくれます。
 いろいろな“世界の知り方”を、子どもたちと一緒に楽しんでみて下さい。

                 (文:心理カウンセラー 上田郁子)

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